電気機器ハウジングの定義と市場概況
電気エンクロージャーは、発電機、送信機、配電装置などの電気機器を保護するために使用されます。電気エンクロージャーには金属製と非金属製の2種類があります。発電、送信、配電などの機器では、スイッチ、表示器、ノブを取り付けるキャビネットとしてエンクロージャーを使用し、ユーザーへの感電防止や機器の様々な環境変化からの保護を図ります。エンクロージャーは実用的な要件を満たすだけでなく、消費者の目にも心地よいデザインが求められます。
QYResearchが最新発表した「電気機器ハウジング―グローバル市場シェアとランキング、全体の売上と需要予測、2026～2032」市場調査報告書によると、世界電気機器ハウジング市場規模は2024年の約7270百万米ドルから2025年には7597百万米ドルへ着実に成長し、予測期間中に5％の複合年間成長率（CAGR）で拡大を続け、2031年には10180百万米ドルに達する見込みである。
電気機器ハウジング市場規模（百万米ドル）、2024-2031年
上記データは、QYResearch報告書「電気機器ハウジング―グローバル市場シェアとランキング、全体の売上と需要予測、2025～2031」に基づく
主な推進要因：
1.極端な自然災害に対応するための強制的な安全基準：日本は地震、台風、豪雨などの自然災害が頻発する地域に位置しており、重要な電力インフラに対する保護規範は世界でも最も厳格な水準にあります。電気機器ハウジングには、優れた耐震構造、高度な防浸水性能（IP保護等級）、および耐塩害・耐腐食性能が求められています。これにより、高強度金属製ハウジングの高度化が進むと同時に、ガラス繊維強化プラスチック（GFRP）などの複合材料ハウジングの採用も促進されています。
2.産業オートメーションと「Society 5.0」戦略の本格的推進：日本政府が推進する「Society 5.0」戦略および製造業回帰政策により、工場の自動化・スマート化が急速に進展しています。産業用ロボット、CNC工作機械、スマートセンサーの大規模導入に伴い、産業制御・自動化システム向けの電気機器ハウジング需要が拡大しています。これらのハウジングには、油汚れ、粉塵、振動といった過酷な産業環境下での高い保護性能に加え、設置・保守の容易性が求められています。
3.データセンターおよび5Gネットワーク構築によるインフラ需要の高まり：日本は世界有数のIT・通信技術大国として、データセンターの増設および5Gネットワークの集中的な展開段階にあります。これにより、サーバーラック、ネットワークキャビネット、屋外基地局設備向けの電気機器ハウジングに持続的な需要が生じています。当該分野では、優れた放熱設計や電磁シールド性能に加え、コンパクト化、モジュール化、高電力密度化といった設計トレンドが進み、製品への要求水準は一層高度化しています。
4.電力システムのスマート化アップグレードによる構造的更新需要：日本の電力システムは、レジリエンスと効率性向上を目的に、デジタル化・スマート化への転換が進んでいます。この過程では新設プロジェクトのみならず、既存の中低圧開閉装置や配電盤のスマート化改修・更新需要も顕在化しています。これにより、温湿度センサーや扉開閉センサーなどのスマート感知機能を組み込めるモジュール型電気機器ハウジングに対する既存更新市場が形成されています。
機会：
1.洋上風力発電の急成長がもたらす特殊ハウジング需要：日本政府は洋上風力発電を戦略的エネルギーとして位置付け、大規模な導入目標を掲げています。これにより、高塩害・高湿度・強紫外線などの過酷な海洋環境に耐える特殊電気機器ハウジング（洋上昇圧ステーションや変換装置プラットフォーム向けなど）に新たな高付加価値市場が創出されています。ガラス繊維強化ポリエステルなどの耐腐食性複合材料ハウジングは、この分野で大きな成長余地を有しています。
2.電気自動車（EV）充電インフラ普及に伴う付帯需要：EVの普及に伴い、日本では公共急速充電ステーションの整備が加速しています。屋外で24時間稼働する充電設備では、核心となる電力モジュールを保護するため、高信頼性、高効率放熱、かつ視認性に優れた専用電気機器ハウジングが求められています。これは、ハウジングメーカーにとってカスタマイズ設計と量産の両面で新たな成長機会を提供します。
3.エネルギー貯蔵システムの大規模導入による統合型ソリューション需要：電力安定化およびピークシフトを目的として、日本では家庭用および産業・商業用蓄電システムの導入が急拡大しています。これにより、電気機器ハウジングには、バッテリーモジュールやBMSの収納に加え、熱管理（液冷／空冷）、防火安全、スマート監視機能の統合が求められています。結果として、「プラグアンドプレイ」型の統合キャビネットソリューションへと進化し、付加価値は大きく向上しています。
制約する要因：
1.固定化された「系列」サプライチェーンと高い参入障壁：日本の製造業では、総合商社や大手ブランド（東芝、三菱、日立など）を中核とする閉鎖的な「系列」サプライチェーンが根強く存在しています。外部から参入する電気機器ハウジング供給企業にとって、長年の信頼関係に基づく調達網へ入り込むことは極めて困難であり、高度な参入・認証障壁に直面します。
2.複雑かつ独自性の高い国内規格・認証制度：日本市場では国際的なIEC規格に加え、JIS（日本産業規格）や大手メーカー独自の社内規格が多数存在します。電気機器ハウジングが市場参入するためには、時間とコストを要する国内試験・認証をクリアする必要があり、これが大きな技術的・時間的障壁となっています。
3.国内競合企業の強力な垂直統合能力：日本の多くの大手電気機器メーカー（富士電機、安川電機など）は、自社内に金属加工やハウジング製造能力を有する、あるいはグループ内で内製供給体制を構築しています。この垂直統合モデルにより、独立系電気機器ハウジングサプライヤーが高付加価値のカスタム案件に参入する余地は大きく制限されています。
4.厳格な製造物責任法と長期保証要求：日本では製造物責任法が非常に厳しく、電気機器ハウジングの不具合が重大事故につながった場合、メーカーは巨額の賠償責任や致命的なブランド毀損リスクを負います。さらに、日本の顧客は国際的慣行を上回る長期保証（10年以上）を要求するケースが多く、これがサプライヤーに長期的な品質リスクとアフターコスト負担をもたらします。
この記事は、QYResearch が発行したレポート「電気機器ハウジング―グローバル市場シェアとランキング、全体の売上と需要予測、2026～2032」
■レポートの詳細内容・お申込みはこちら
https://www.qyresearch.co.jp/reports/1612261/electric-enclosure
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