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PDH装置の世界および日本市場:メーカー、シェア、トレンド予測2026

PDH装置の定義と市場概況

PDH装置は、プロパンから水素を取り除いてプロピレンを製造するプロセスである。主製品であるプロピレンに加え、副産物として水素資源も得られる。これは化学製造において副産物水素資源が最も豊富な装置の一つでもある。

QYResearchが最新発表した「PDH装置―グローバル市場シェアとランキング、全体の売上と需要予測、2026~2032」市場調査報告書によると、世界PDH装置市場規模は2024年の約2587百万米ドルから2025年には2726百万米ドルへ着実に成長し、予測期間中に6%の複合年間成長率(CAGR)で拡大を続け、2031年には3867百万米ドルに達する見込みである。

PDH装置市場規模(百万米ドル)、2024-2031年

上記データは、QYResearch報告書「PDH装置―グローバル市場シェアとランキング、全体の売上と需要予測、2025~2031」に基づく

主な推進要因:

1.プロピレン供給の安全性を重視する動きが、国内プロピレン生産能力の新たな選択肢としてPDH装置の導入を促進:日本の石油化学産業では、エチレン分解装置の稼働率が周期的に変動し、原料も輸入燃料油などへの依存度が高い。PDH装置はプロパンを原料としてプロピレンを生産できるため、原料調達の多様化と供給安全性の向上に寄与する戦略的補完手段となり、日本国内におけるPDH装置投資の動機を支えている。

2.PDH装置の副産水素が、日本の水素社会推進政策と高い親和性を有する点が投資魅力を高めている:PDH装置はプロピレン製造過程で一定量の水素を副産する。水素社会の実現を国家戦略として掲げる日本において、この副産水素を効率的に活用し、地域のエネルギー・化学ネットワークに統合できれば、プロジェクト全体の経済性と環境価値を高め、PDH装置への投資魅力を一段と強化することが可能となる。

3.環境政策下で、より柔軟かつ効率的なプロピレン生産技術としてPDH装置が選好される可能性:従来のスチームクラッカーと比較すると、PDH技術は重質原料に依存しない点で補完的な役割を果たす。理論上エネルギー消費は低くないものの、原料構成の柔軟化や全体プロセスの最適化を重視する投資戦略の中で、日本の化学企業が生産ネットワーク改善手段としてPDH装置を選択する余地が広がっている。

4.日本国内におけるプロピレン需給の構造的ギャップこそが、PDH装置導入の最も根本的な推進力:日本ではポリプロピレン、アクリロニトリル、プロピレンオキシドなど下流産業のプロピレン需要が安定して存在する。一方で、老朽化したスチームクラッカーの停止や稼働率低下、製油所構成の変化により供給力に制約が生じている。PDH装置は独立した原料ルートで高効率かつ選択的にプロピレンを生産できるため、この需給ギャップを補い、下流産業の原料安全保障を支える中核装置として位置付けられる。

5.特定局面における原料コスト面での優位性が、PDH装置投資を後押しする主要な経済要因:PDH装置の主原料であるプロパン価格は、原油やナフサ価格と一定程度切り離され、北米シェールガス生産量や世界LPG貿易動向の影響を強く受ける。原油価格が高止まりし、プロパン供給が潤沢な局面では、PDH装置によるプロピレン製造コストはナフサ分解ルートに対して顕著な競争力を示し、投資家の新設意欲を強く刺激する。

機会:

1.CCUS(炭素回収・利用・貯留)技術との統合は、PDH装置が長期的に操業許可を維持するための重要な成長機会:PDH装置の主なCO₂排出源は燃料燃焼および再生ガスである。設計段階または改造時に炭素回収設備を組み込み、回収したCO₂を地中貯留や化学品原料(例:メタノール)として利用することで、PDH装置は「ブルー水素/ブループロピレン」生産装置へと進化し、将来の低炭素規制や炭素税環境下でも競争力を維持できる。

2.副産水素を活用し、「プロピレン単一生産」から「プロピレン・水素複合型エネルギー化学拠点」への転換:将来のPDH装置は、圧縮・貯蔵・発電設備などを併設することで、地域のクリーン水素供給ハブとして機能する可能性がある。このモデルは製品価値を最大化すると同時に、国家水素インフラとの結びつきを強化し、装置の戦略的重要性を高める。

3.原料柔軟性技術の進展により、再生可能原料由来プロピレンのグリーンプレミアム獲得が可能:将来的にバイオプロパンや廃プラスチック熱分解由来プロパンが商業化された場合、これらを処理可能なPDH装置は、バイオベースまたはサーキュラープロピレンを生産できる。これはサステナブル原料を求めるブランドオーナー需要に応え、高付加価値市場を開拓する好機となる。

4.小型化・モジュール化PDH装置の開発が、分散型プロピレン・水素供給の新用途を創出:特定の工業団地や資源制約地域向けに中規模・モジュール型PDH装置を導入することで、初期投資を抑え、建設期間を短縮し、地産地消型供給を実現できる。これはPDH装置の製品形態革新と新市場開拓につながる。

5.デジタル化・高度化された運転技術の全面導入が、PDH装置の競争力と収益性を大幅に向上:AIを活用した原料調達最適化、先進プロセス制御、予知保全、エネルギー管理により、PDH装置の変動運転コストを低減し、稼働安定性と触媒寿命を向上させることができる。これは将来の新設・改造プロジェクトにおける標準的手法となる。

制約する要因:

1.プロピレンとプロパンの価格差(PDH装置の中核収益指標)の激しい変動が、経済性に高い不確実性をもたらす:PDH装置の収益性はプロピレンの絶対価格ではなく、両者のスプレッドに依存する。この価格差は原油、ナフサ、天然ガス、世界的なプロピレン需給など多様な要因で大きく変動し、長期的な投資回収予測を困難にしている。

2.既存スチームクラッカーや製油所副産プロピレンとの競合が、市況低迷期にPDH装置の採算を圧迫:需要が弱い局面では、副産物としてプロピレンを得る装置はコスト耐性が高く、価格競争力を持つ。このため、単一プロピレン生産設備であるPDH装置は不利な立場に置かれ、減産や停止を余儀なくされる可能性がある。

3.技術ライセンスおよび高性能触媒供給が少数の国際企業に集中し、長期的な技術依存と高コスト構造を招く:PDH装置の中核技術と触媒はUOPやルンメス(Lummus)などが掌握しており、日本の事業者は高額な初期ライセンス費用に加え、装置ライフサイクルを通じた専用触媒購入と技術サービス料を負担する必要がある。これは長期的な収益性と自主性を低下させる要因となる。

この記事は、QYResearch が発行したレポート「PDH装置―グローバル市場シェアとランキング、全体の売上と需要予測、2026~2032」

■レポートの詳細内容・お申込みはこちら

https://www.qyresearch.co.jp/reports/1318403/pdh-equipment

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